(5)メル・ギブソン

土の匂いがする正統派ハンサム

「メルギブ」などと気安く呼ばれ、ちょっとノーテンキなキャラクター
を印象づけてしまったのは、大ヒット作『リーサル・ウェポン』(87)あ
たりからだろう。愛妻を事故で失った自殺願望のロス市警刑事マーチン・
リッグスはリーサル・ウェポン(人間兵器)とあだ名される男で、ダサ
イ長髪をなびかせて猪突猛進のプッツンぶりはかなりヘン?なキャラク
ター。このマーチンとコンビを組まされるのが定年を1週間後に控えた
黒人のベテラン刑事マータフ(ダニー・グローバー)。両極にある性格
の二人は運命共同体?として事件解決まで大活躍する。職人肌であるリ
チャード・ドナー監督のテンポいい演出、切れ味鋭いアクション、小気
味いい会話、そしてアットホームな雰囲気。この軽妙洒脱なバディ・ム
ービーの面白さは観客を魅了し、メル・ギブソンは一気にドル箱スター
となり、当然のようにシリーズ化もされた。ファンとしてはうれしいこ
とには違いないのだが、どうも長髪のメルに違和感を感じ、しかもコメ
ディアンとしての隠れた魅力も引きだされてしまい、戸惑ってしまった
のは事実である。

 メル・ギブソンは1956年1月3日、ニューヨークで生まれた。12歳
のときに父が仕事に失敗し、一家はオーストラリアへ移住。シドニーの
国立演劇学校へ通っているときにテレビ出演と映画デビューを飾り、79
年にジョージ・ミラー監督の『マッドマックス』の主役に大抜擢されて
国際的に知られるようになった。
 愛する妻子をひき逃げされて復讐に乗りだす男の孤独と虚無、そんな
雰囲気を全身に漂わせていた『マッドマックス』のメル・ギブソン。時
代設定が近未来だったのと、荒涼とした風景が現実感のない無機質でザ
ラッとした感触を生み、メル・ギブソンの端正な風貌と佇まいにはプリ
ミティブな匂いが際立っていた。だからこそ、熱きマッチョ的な雰囲気
はあまり感じられずに、わたしとしては大いに気にいったのだった。
 同年、オーストラリアでこれとは対極にあるような役を演じている。
これが『ティム』である。日本では劇場公開されていないが、わたしは
13年前にビデオで観て思わず唸ったくらいに彼はよかった。年上の女に
夢中になる知恵遅れの心やさしい青年役で、これが見事にはまっていた。
『マッドマックス』とは180度違う役だが、彼の純粋無垢なブルーの瞳
がキラキラとして、なんとかわいらしかったことか。

 そして、なんといっても彼の転機となるのが、ピーター・ウィアー監
督の『誓い』(81)と『危険な年』(83)である。ここら辺りを観ていない
人にとっては、彼の魅力を理解していないといっても過言ではない。正
統派ハンサムであるメル・ギブソンの魅力が遺憾なく発揮されていた。
真面目で優しい心根をもつ青年。特に後者は、スカルノ政権末期のイン
ドネシアを舞台にオーストラリアTV特派員と大使館秘書との恋愛をから
めた社会派映画。シガニー・ウィーバーとの共演もうれしかった。恋愛
映画が苦手?なわたしだったが、この作品は普通の恋愛ものとは一線を
画し、当時の複雑な政治状況や東洋思想をじっくり描き込んで、さすが
ピーター・ウィアー!だったのである。
『ザ・リバー』(84)でハリウッドに進出したメル・ギブソン。この作品
もわたしは好きである。どこか土の匂いのする彼にはピッタリの頑固で
心やさしい農夫役。困難にぶちあたってもこんな夫だったら、どうにか
力を合わせてやっていけそうだなどと思わせるような役だった。同年、
彼が演じる死刑囚と刑務所長夫人との逃避行を描いた『燃えつきるまで』
もダイアン・キートンのミスキャストはあれど、地味ながらいい作品だ
ったと思う。

『リーサル・ウェポン』の大ヒット以降、彼のタフネスぶりとお軽さば
かりが取り沙汰され、「メルギブ〜」と呼ばれ、一部では「おバカさん」
扱いされ?それでもわたしは彼の本来の美しさを信じ、昔の面影を探し
て映画を観ていた。そんなメル・ギブソンが93年に『顔のない天使』で
監督デビューを果たし、監督としての才能を高く評価された。わたしは
うれしかった・・・。「単なるおバカじゃなかったのね〜。メルちゃん、
やるじゃ〜ん」なんて批評も読んで、「バカに映画が撮れるか」とわたし
は無責任な映画評論にうんざりしたのだった。2本目の『ブレイブハート』
(95)ではアカデミー賞最優秀作品賞、監督賞を獲得した。この年は候補作
品がどれも地味だったために受賞は僥倖とも思えるが、快挙は快挙であっ
た。
 その後もヒット狙いのアクション映画が続いたが、少しばかりうれしか
ったのは『ペイバック』(99)では、冷徹非情だが筋を通すというヒーロー
役を飄々とどこかシニカルに演じていたこと。
 実生活では6人の子どもの父親であり(その後、増えたのかな)、撮影
現場に家族を連れてきたがるという家庭人。共演者によると、彼は常に冗
談を飛ばし、お茶目ぶりを発揮しているらしいが、仕事に取り組む彼は超
マジメ人間とのこと。

 メル・ギブソン、ただいま45歳である。アメリカでは「もっともセクシ
ーな男性スター」と呼ばれたのも納得できるし、最近では渋味と知性を感
じさせる風貌にもなってきた(そう思うのはわたしだけか・・)ので、今
後も目が離せない。願わくは、じっくり煮込んだスープのような良質のド
ラマへの出演である。

●私的ベスト5
1.『危険な年』(83)
(監督:ピーター・ウィアー 共演:シガニー・ウィーバー、リンダ・ハント)
2.『ザ・リバー』(84)
(監督:マーク・ライデル  共演:シシー・スペイセク、スコット・グレン)

3.『誓い』(81)
(監督:ピーター・ウィアー 共演:マーク・リー)

4.『リーサル・ウェポン』(87)
(監督:リチャード・ドナー 共演:ダニエル・グローバー)

5.『ハムレット』(90)
(監督:フランコ・ゼフィレッリ 共演:グレン・クローズ、アラン・ベイツ)


●Keityの採点
 ルックス★★★★
 人気度★★★★★
 演技力★★★
 アクの強さ★★
★★★★★抜群!文句ナシ  ★★★★役柄しだい ★★★ほどほど   ★★がんばれ! トホホ〉

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