(8)

彼らの季節は終わらない

道半ばで振り返る空の遠景
雲間の後光は天使の梯子
昼と夜の間
生きてきた時間と生きていく時間
それら狭間の小休止

オサムが女と入水した六月のある日
困惑と非難の言葉が渦巻いた
倦怠は沈んで桜桃が実ったと誰かがささやいた

ユキオが自決した十一月のある日
驚愕と羨望の悲鳴が聞こえた
思想は消えて美学が残ったと誰かがつぶやいた

ふと思い出した彼らの人生
はたと気づいた彼らの死の意味
そのまま生き続けていたらどんな人生だったのか
古びた書物に彼らの面影を写して
時代の空気を感じとってみたい

いまを生きる表現者たち
加齢しても決して老けこまず
「いろいろあったけど元気でいるよ」
「いまも相変わらず続けているのさ」
「じじいになっても同じだろう」
踵をかえした背中に照れ笑いが浮かぶ

モリオが心かろやかに歌うたえば
昭和ロマンが花開き、しみったれたうつつも水の泡

リュウが精力的に書き綴れば
十代の性と暴力と希望がエナージーを生む

ケンイチが「死ぬな、生きろ!」とシャウトすれば
無限の色彩が乱舞して、言葉のソウルが湧き出る

彼らが疾走しながら夢みるもの
彼らが直観しながら試みるもの
すべてを包括して表現する彼らの季節がつづく

彼らの魂、彼らの肉体
彼らの躍動、彼らの逡巡

自我を大きくまるめて転がせば
ゆるやかな斜面をどこまでも下りていく

(1)  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8)  (9)  (10)  (11)  (12)  (13)

HOME/MENU