愛用のカメラは黒いボディのニコンF801
レンズは50mm、ズームはいらない
きみを簡単に近づけたり、遠のけたり
そんなことはしたくない
きみをそばに感じていたいなら
ぼく自身がズームになろう
ぼくはカメラを構え、
脇を固めてきみの前に立つ
その間隔、約3メートル
中秋のポートレート?
ファインダーからのぞくと
きみは笑わない女だった
不機嫌というのでもない
いまだけ 、変な女
ぼくは 声をかけながら きみを動かし
きみが笑うまでシャッターを押しつづけた
押しても押しても笑わない
どういうわけか、変な女
いよいよ最後の一枚というとき
きみの表情が変った
「あなたの頭にトンボが小休止」
ゆるく微笑んだ
ぼくはあわててシャッターを押した
最後の音が耳に残った
永遠の一瞬を刻んで 時間が止まった