(14)

男と女

男の口から嘘がポロリと落ちたので
女はひょいとつまんでそれを口に入れた
男は気まずそうに女を見た
女は歯を見せて少しだけ笑った
そのとき
電線に止まったカラスが「カー」と鳴き
夕陽に染まったレースのカーテンが揺れた

女の口から勢いよく本音が飛び出したので
男はあわててそれをポケットに詰め込んだ
女は醒めた目で男を見た
男は無言のままうつむいた
そのとき
電車のドアからいっせいに乗客が飛び出し
構内アナウンスが悠長に流れた

男は電車に飛び乗り
女はホームに残った
シャットアウトされたドアの向こうに
男の寒そうな背中が見えた
女は踵を返して「あばよ」とつぶやき
ゆっくりとホームの階段を昇った

すでに冬を迎えていた

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